メンタルヘルスと栄養

Human and Nutrients
食と健康の情報

多様化する食事スタイル

なんだか気持ちが沈む、イライラもやもやしてしまう。休日はそれなりに好きなことでリフレッシュできているし、食べたいものを食べているのに、原因不明なブルーな気持ちになることってありませんか?

正直なところ、心と身体は複雑に影響し合っていて簡単には説明がつきません。しかし、可能性のひとつとして栄養の分野から考えると、もしかしたら “隠れ栄養不足” かもしれません。

身体だけでなく心を支えてくれている栄養素があります。マグネシウムや鉄、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸です。

栄養界隈でこれらの栄養素は必要量が微量なため普通の食事を食べていればよほどのことがない限り不足しないといわれてきました。しかし、現代の多様化社会では、そのよほどのことが起こっているのかもしれません。

サプリメントで摂るのは簡単ですが、明確な効果を立証している研究が少ないうえに、できることなら食品からとることを大事にしたいものです。

今回は、それぞれの栄養素のメンタルにおける効能と多く含まれる食品を紹介します。心と栄養の関連を一緒に考えましょう。

主要ミネラル

マグネシウム

体内で約300種類の酵素を活性化させる重要なミネラルです。神経の興奮を抑えたり、エネルギーをつくる助けや血圧の維持に関わっています。骨に貯蔵されているため、摂取量が少ないと骨から遊離します。不足するとけいれんや震え、イライラの原因になります。サプリメントなどで摂りすぎると下痢を引き起こします。

玄米や雑穀など未精白の穀類や、
野菜や大豆などの植物性食品、アーモンドに多く含まれます。

微量ミネラル

赤血球中のヘモグロビンの成分で、酸素の運搬に重要な役割を担っています。筋肉中の成分でもあります。不足すると貧血になることはよく知られていますが、その陰に疲労や息切れ、冷え性があります。

植物性の鉄は、豆類大根菜ほうれん草ひじきなどに多く含まれ、ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が高まります。
動物性はレバーに限らず肉や魚全般に含まれるため、こだわりすぎず様々な種類を食べるのがよいです。

亜鉛

細胞の産生や増殖に関わり、発育や傷の回復促進を担います。骨や筋肉の成長や修復のほか、正常な味覚を保つためにも欠かせません。ホルモンバランスを整えてくれる効果やがん予防などさまざまな効果が注目され、さらなる研究が進められています。不足すると発育不全や味覚障害、肌荒れ、抜け毛などが起こります。

カキや鯖などの魚介類チーズ大豆ココアなどに含まれます。手軽な方法としては、イライラしてお菓子を食べすぎてしまう代わりに、お湯200ml(飲みにくい場合はホットミルク)に砂糖が添加されていないピュアココア大さじ1を溶かしてゆっくり飲んでみてください。1日2~3杯が目安です(牛乳は1杯まで)。

 

メンタルに関連があるとされるミネラル3つは、身体の土台となる血液や骨、筋肉に関連する栄養素でした。血液の生成や運搬がうまくいかなかったり、足りない部分を補うために骨から溶け出たりすることは避けたいところです。また、欠乏症が貧血であるミネラルが多いことから、貧血、疲労や息切れ、冷えは、たとえ軽度でも慢性化すると精神的にストレスになるでしょう。これが不安や気分の落ち込みと関連するのかもしれません。

脂溶性ビタミン

ビタミンD

カルシウムやリンの吸収・沈着に関わり、骨や歯の形成に重要な働きをします。また、筋肉の維持・増加にも関与します。脂溶性ビタミンは文字通り水に溶けない性質があり、血中ではなく主に脂肪組織や肝臓に貯蔵されます。ビタミンA、K、E、Dが脂溶性とされ、油で炒めたり、ドレッシングをかけたり脂質と一緒にとると吸収されやすいといわれています。ただ、尿で排出されにくいことから、サプリメントなどで過剰に摂りすぎると倦怠感や食欲不振などが起こるといわれています。

魚類きのこ類に多く含まれます。野菜や穀類、イモ類にはほとんど含まれていません。また、日光から皮膚でも作られますが、日光を浴びにくい冬は、夏に比べ体内で作られるビタミンDが70%も減少するといわれています。コロナ禍で外出が減っている今こそ食品から多くとるのがよさそうです。週3回以上は魚を食べましょう。

水溶性ビタミン

ビタミンB6

たんぱく質からエネルギーを作るのに必要です。心の安定ホルモン「セロトニン」をはじめとする4つの神経伝達物質の合成にも関与し、睡眠、行動、気分、記憶、エネルギーなど脳機能において重要な役割を果たします。抗炎症作用や免疫機能の維持、皮膚の正常化にも不可欠です。不足すると皮膚炎や口内炎、貧血、脳波の異常などが起こります。

まぐろカツオバナナにんにくパセリ唐辛子かぶさつまいもなどに含まれています。食べる頻度が少ないものがある場合は、これを機に取り入れてみるのがよいです。

ビタミンB12

ヘモグロビンの合成を助け、正常な赤血球つまり血液をつくる助けをします。血液細胞だけでなく脳神経など多数の機能や発達を正常に維持するために必要な栄養素です。不足すると貧血、神経・精神症状が起こるとされています。

動物性食品により豊富に含まれるため、厳格なベジタリアンやヴィーガンは特に不足しないよう意識する必要があります。カキやあさり、しじみなどの貝類レバー、乳製品や卵に多く含まれます。プラントベースでは栄養酵母(ニュートリショナルイースト)、シリアル、全粒穀類に比較的多く含まれています。

葉酸

葉酸もビタミンB群の一種です。ビタミンB12とともに血液をつくる助けをします。造血や細胞を新たにつくる過程に不可欠であり、妊娠・授乳中の女性は特に補給が必要とされています。水溶性のため多くは調理の過程で損失してしまうことからサプリメントでの摂取を推奨される場合もありますが、調理法の工夫で食品からなるべく多くとることも可能です。不足すると貧血、子どもの発育不全、口内炎などが起こります。

枝豆モロヘイヤほうれん草ブロッコリーに含まれます。味噌汁やスープ、混ぜご飯で摂るほか、旬の時期に食べることも大切です。例えば、冬のほうれん草には夏の5~10倍のビタミンが含まれるといわれています。調理法と時期を意識するのもよいでしょう。

 

メンタルに関連があるとされるビタミンは、血液だけでなく、神経系に関与する栄養が多く挙がりました。ビタミンB群は互いに協力し合って役割を果たしており、水溶性は体内に貯蓄できないものが多いため、全体をバランスよく毎日摂取することが大切です。

心の健康に効果がある✖ 関連がある〇

ビタミンやミネラルについてひとつひとつの効能をみると、確かにこれらの栄養素の過不足がメンタルに影響していることは考えられます。

しかしエビデンスの話になると研究はまだ不十分です。海外の記事によると、心と栄養についての研究は、関連を示しているにすぎず、原因や効果を証明するものではありません。

摂取した栄養量を正確に測定する難しさを踏まえたうえで、心の健康への利益は果物や野菜、精製していない穀物、魚に含まれるオメガ3などの良質な脂質に関連があると示されています。

また、これらのすべての食品には抗炎症成分つまり鎮静成分が含まれており、この作用が心の健康に関わるのか、とも提議されています。証明するには至らずも、不安や落ち込みの原因として疑う価値はありそうです。

掘り下げるとキリがありませんが 、つまりは今回登場した食品をはじめ全体をバランスよく毎日摂取するのが大切ということですね。では、バランスよくどう食べるのか、それはまた別の回でお話したいと思います。

Comments

  1. Chie より:

    Let’s talk about when you feel depressed.

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